ATOMの学術報告

1983年
3月
第56回日本薬理学会総会(大阪)

抗腫瘍性多糖の研究(第32報)
Agaricus blazei (ヒメマツタケ)より得られたATOMの抗腫瘍活性と
抗腫瘍機作について


伊藤 均・志村圭志郎・日高弘義
(三重大学医学部・薬理学教室、動物実験施設)

今回は試験管内培養濾液画分・多糖体(ABP-F)について検討を行った。
ABP-FはDEAE-Sephadex(A-50,acetate)により0.25Mから0.5M塩濃度で1-V1画分にstepwiseに分画したが、マウスSarcoma-180に対する抗腫瘍活性は各画分に分散して認められた。

ABP-Fは 精製し易く、かつ抗腫瘍活性も強いので、これをATOM(antitumor organic substance Mie)と名付けて各種の生物活性につき検討した。

実験成績 
 ATOMのマウスEhrich ascites腫瘍に対する抗腫瘍活性は、50mg/kgx10days,1.p.投与で40%、100mg/kgx10days,1.p.投与で70%の腫瘍に完全消失が認められた。

またATOMの作用は既存の抗癌剤であるcyclophosphamide(20mg/kgx6),mitomccin C(0.25mg/kgx6)、 cytosinearabinoside(20mg/kgx6)投与群と比較して優れており、さらにこれらの抗癌剤と併用すると全例に腫瘍の完全消失が認められた。

Sarcoma-180において抗癌剤単独では腫瘍の完全消失が認められない投与量においてもATOMと併用すると、 腫瘍の完全消失が期待できることが判明した。

ATOMは補体に対して強いaltermativepathwayを導く活性があり、人、マウス、モルモットの各血清においてC3のconvert活性が認められた。

この活性は人及びモルモットのC4depleted血清中でも同様のconversionが認められた。

マウスにATOMを 100mg/kg,1.p投与して、3,12,24、48、hr後にperitoneal macrophagesを採集し、Salmonella enteritidis NO.11 strainを加えて、2hr、incubationした後、そのphagocytosisを測定すると抗腫瘍活性をもたないgiycogen,dextranに比較して約2倍の phagocytosis上昇が観察された。

1984年
3月
第57回日本薬理学会総会(京都)

抗腫瘍性多糖の研究(第33報)
ヒメマツタケより得られた抗腫瘍性多糖体ATOMの作用機作ついて


伊藤 均・志村圭志郎・日高弘義
(三重大学医学部・薬理学教室、動物実験施設)

 我々のscreeningによると、多くの坦子菌由来の多糖体はツリガネタケを除き、またCandidaおよびSaccharomyces mannanはS-180には有効であるがEACには無効である。今回はEACに有効性を示す興味あるATOMの抗腫瘍機作の解明を試みた。

実験成績
1.Hela-S3,LID,CEF,MEF,Raji及びS-180などの堵養細胞系に対してATOM(100-2000μg/ml)は直接的な細胞毒性作用を示さない。

2.
マウス皮下移植S-180に24hr後よりATOM、10mg/kgx10,1.p.の場合、処置群の腫瘍の発育遅滞は7-10日より認められる。

3.
ATOM投与によりS-180およびEACが消失した動物は、腫瘍を再移植しても、多くは腫瘍の痕跡をも認め得ないか、認め得ても粟粒の大きさに終止し、腫瘍の拒絶反応が成立する。

4.
生体レクチンの一つとしてmannanbinding proteinの存在が知られている。
 ヒメマツタケ由来の多糖はmannanが主体であることから抗腫瘍機作を検討する上で、EAC細胞上のmannan結合性 receptorの存在を検討した。
 EAC細胞上に酵母mannanおよびATOMが結合することを証明できた。
 腫瘍細胞中のmannan結合蛋白はATOMの抗腫瘍機作を明確にする上に重要な位置を占めることが推定されたので、現在さらに詳細について検討中である。


5.
ATOMは人、マウス、各血清中でcomplement(C)のC3 convert活性をもち補体に対して強いalternative pathwayを導くが、抗腫瘍活性をもたない多糖はその活性程度は弱かった。

1984年
10月
第43回日本癌学会総会(福岡)

坦子菌由来多糖体の抗腫瘍性の研究
ヒメマツタケ(Agaricus blazei)由来多糖体ATOMの抗腫瘍活性について

1985年
10月
第44回日本癌学会総会(東京)

マウス腹腔マクロファージにおける
抗腫瘍性多糖体ATSO及びATOMの経口投与の影響


志村圭志郎・伊藤 均
(三重大学医学部・薬理学教室、動物実験施設)

 抗腫瘍性多糖体であるカワラタケ由来のATSO及びヒメマツタケ由来のATOMは、マウス腹腔内投与によって補体の活性化がもたらされ、更にマクロファージの活性化が認められ、その抗腫瘍活性に重要な役割を演じているものと考えられる。

 ATSO及びATOMをマウスに経口投与するとSarcoma-180の消失、またEhlrich ascites carcinomaの延命につながる抗腫瘍性が認められており、経口投与による生体の防御機能になんらかの影響を与えていると考えられる。

これら多糖体をマウスに経口投与すると腹腔内マクロファージは5~7日目にかけて増加し、10日目以降には下降に向かい、陽性対照のzymosanと同様の成績が得られた。

またこれらの腹腔マクロファージは、抗マウスC3F(ab′)2と反応し、蛍光抗体法で観察すると3日目以降から蛍光陽性細胞が増加し、5~7日目では60%前後が蛍光陽性を示した。

蛍光光度のintensityもこの時期に一致して高かった。

これらマクロファージは24時間invitroでの培養後も蛍光陽性細胞の減少は少なく、C3 componentを産生しているものと考えられる。

マクロファージの形態もこれら抗腫瘍性多糖体の経口投与3日目では円形であるが5日目以降では拡大化した活性化像を示した。

かかる現象が認められたことは、抗腫瘍性多糖体の経口投与を行なう上で重要な意味を持つものと考えられる。

1986年
10月
第45回日本癌学会総会(札幌)

坦子菌由来多糖体の抗腫瘍性の研究(第37報)
ヒメマツタケ( Agaricus blazei) 由来多糖体ATOMの抗腫瘍細胞への結合性について


志村圭志郎・伊藤 均
(三重大学医学部・薬理学教室、動物実験施設)

 ヒメマツタケ( Agaricus blazei)から得られた多糖体ATOMは約5%ほど蛋白質が結合していることが知られており、その抗腫瘍性はSarcoma-180の固型腫瘍に優れた抗腫瘍性を示すと共にEhrlich ascites carcinome(EAS)のような 腹水型腫瘍に対しても抗腫瘍性が認められている。

これらの作用機作を検討する上で我々は既に第43回日本癌学会総会で、ATOMがEAC細胞と直接結合することを見出し報告している。

今回は共同研究者である静岡大学農学部、水野 卓教授よりヒメマツタケ多糖体精製画分の提供を受け、これらの精製多糖画分のEAC細胞への結合性を検討した。

これらの多糖画分は容易にFITCでラベルすることができ、いずれも蛋白質を結合していることが見出された。

また、この多糖体画分は大きく中性多糖体画分と酸性多糖体画分に分けることができ、そのEAC結合性は、 酸性多糖体画分が非常に強い結合性を示した。

また、これらの多糖体画分のEAC細胞結合性はmannanによって抑制される事実が明らかとなった。

中性多糖体画分と酸性多糖体画分の抗腫瘍性をも検討している。

1996年
6月
第43回日本実験動物学会総会(新潟)

培養ヒメマツタケ多糖体ATOMとEnrlich腹水腫瘍細胞との結合性について

志村圭志郎・津村秀樹
(三重大学医学部・動物実験施設)

 多くのキノコ由来抗腫瘍多糖体は、Sarcoma-180のような固型腫瘍に対しては、抗腫瘍効果が認められるが

Ehrlich ascites carcinoma (EAC)のような腹水型腫瘍に対しては無効とされている。

ところで、培養ヒメマツタケ(Agaricus blazei)菌糸体より得られた多糖体ATOMは、固型腫瘍は勿論のこと、腹水型腫瘍にも有効であることが見出され、この成績は既に報告している。

今回この抗腫瘍性を検討する上で考慮すべき点として、腹水腫瘍(EAC)を移植したマウスの腹腔内にATOMを投与することと、抗腫瘍性とに何等かの機作が存在するのではないかと考えられることからATOMとEACとの直接作用の存在を検討することにした。

AOTMの多糖体画分はグリコマンナンを主体としており、約5%の蛋白質を結合していることが明らかにされている。

我々はこの蛋白質に蛍光色素FITCを結合させ、FITC-ATOMを準備し、EACと反応させることでその直接反応性を検討した。

カバーグラスに付着させエタノールで固定したEACをFITC-ATOMで1時間反応させ、PH7.2の生理食塩水で洗い蛍光顕微鏡で観察するとEAC細胞は強い蛍光を発することが明らかになった。

この反応性は、あらかじめATOMで反応させたEAC細胞では、ほとんど蛍光が認められないことから、ATOMは 容易にEAC細胞と結合することを示している。

また、あらかじめマンノースで処理したEAC細胞でも、FITC-ATOMの結合が阻害されることからEAC細胞上に マンノースに対するreceptorの存在が示唆される。

ATOMには強い補体活性化作用があり、EAC細胞と直接ATOMが結合する事実は、補体活性化による細胞傷害と 関連し、更に抗腫瘍性との関係でも興味深い。

1997年
6月
ANTICANCER RESEARCH 17巻 277-284頁

ヒメマツタケ(Agaricus blazei)より分離した新規多糖ータンパク複合体 (ATOM)の坦ガンマウスにおける抗腫瘍効果とその作用機作

伊藤 均(三重大学医学部・薬理学教室)
志村圭志郎(三重大学医学部・付属動物実験施設)
伊藤 浩子(三重大学生物資源学部・資源生物化学教室)

 ヒメマツタケの培養菌糸体から得られた、多糖-タンパク複合体ATOMの腹腔内および経口投与について4種類のマウス腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討した。

ATOMは皮下移植したマウスのサルコーマ180固型ガンでは、10および20mg/kg/day10日間の投与で、またエールリッヒ腹水ガン、シオノギ腺ガン42およびメサーA線維芽肉腫に対しては、50および100mg/kg/day 10日間の投与で高い効果が認められた。

ATOMは試験管内で、ガン細胞に対して直接細胞毒性を示さなかった。

このように、ATOMのガン増殖阻害作用は、明らかに免疫学的宿主介在性のメカニズムによるものである。

腹腔マクロファージ数、ポリスチレンラテックスビーズの貧食能や補体第3成分(C3)陽性蛍光細胞の割合はATOMで処置したマウスにおいて増加した。

これらの結果より、ATOMの抗腫瘍作用の誘導にはマクロファージ活性化とC3の変化が必要であることが示唆された。


1997年
10月
Food Sttyle 21  第1巻 第5号  25-30

きのこの効能研究ー最新の知見

伊藤 均(三重大学医学部)

ヒメマツタケには、


・抗がん(固型がん・腹水がん・化学発がん・自然発生乳がん)作用
・がん予防効果

・肝機能改善効果
・消化管運動亢進作用
・抗アレルギー作用
・血糖降下作用
・コレステロール低下作用
・ビタミンD2作用
・免疫促進効果など多くの薬理効果をもつことが動物実験で確認されている。

1998年
9月
第57回日本癌学会総会(横浜)

Agaricus blazei 「ヒメマツタケ」菌糸体由来多糖体(ATOM)の
マウスルイス肺癌に対する肺転移抑制作用


伊藤 均・志村圭志郎・伊藤 浩子
(三重大学医学部・薬理学教室、動物実験施設)

 ATOM単独、あるいは5-FUとの併用におけるガン転移抑制効果をマウスのルイス肺ガン誘発肺転移モデルを 用いて検討した。

移植した原発ガン除去後のATOMの腹腔内投与によって、肺転移は抑制された。

特に、ATOMと5-FUとの併用によって顕著に肺転移は抑制された。

また、ATOMで活性化した腹腔マクロファージの静脈内投与によって肺転移は抑制された。

さらに、ATOMは肝薬物代謝系の活性を抑制することが明らかとなった。

ATOMの併用によって、5-FUの組織内濃度は増加した。

これらのことにより、ATOMは臨床においてガン転移の予防の面からも有用であると示唆された。


2000年
9月
第59回 日本癌学会総会

ヒメマツタケの抗腫瘍効果と生物活性

2000年
10月
Biotherapy誌  第14巻 第10号 1009~1015

ヒメ(姫)マツタケ[学名;Agaricus blazei Murrill]の抗腫瘍効果と生物活性

伊藤 均(菌類薬理学研究所)

 ヒメマツタケ子実体由来多糖体(ABPS)と培養菌糸体由来多糖体(ATOM)のマウス移植腫瘍に対する 抗腫瘍効果とその作用機作について検討した。

ABPS、ATOMはサルコーマ180、エールリッヒ腹水腫瘍、 メサーA線維芽肉腫、シオノギ腺癌42の増殖を抑制した。

特に、β-(1→6)-D-グルカン・蛋白複合体、ATOMの腫瘍増殖抑制は顕著であった。

ATOMと5FUの併用は、ルイス肺腫瘍の肺転移数を顕著に抑制した。

これらの 抗腫瘍機作には、脾臓内全T細胞、NK細胞、ヘルパー/インデユーサーT細胞産生能、補体第三成分の活性化、 細網内皮系賦活作用、肝薬物代謝酵素系の抑制が関与していることが示唆された。


2000年 三重大学地域共同研究センター 研究報告 第9号  76-85

Antitumor Mechanisms of ATOM Prepared from Agaricus blazei "Himematsutake" on Lung Metastasis of Lewis Lung Carcinoma